工程1 足場の設置と養生 1〜2日
外壁塗装を始めるにあたって、最初に行われるのが足場の設置と養生作業です。この工程は、職人の安全を確保するとともに、仕上がりの品質を高めるためにも非常に重要な準備段階となります。高所での作業は、安定した足場があってこそ初めて効率よく、そして安全に進められるのです。
足場は建物の形状や敷地条件に合わせて最適な方法で設置されます。たとえば、狭小地では単管足場を用いることが多く、広い敷地では枠組み足場が適しています。設置にかかる日数は、平均的な戸建て住宅であれば1日、多く見積もっても2日程度が目安です。
足場の設置後には、飛散防止ネットやビニールシートを用いて養生作業が行われます。これは、塗料の飛び散りから隣接する住宅や車、植栽などを守るためのもので、特に住宅が密集している都市部では欠かせない工程です。養生が不十分だと、近隣トラブルに発展する可能性もありますので、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
また、この段階では近隣住民への工事挨拶も同時に行うことが多く、工事に関する理解と協力を得ることで、作業全体をスムーズに進めることができます。近隣対応の丁寧さも、優良業者を見極めるポイントのひとつです。
なお、足場と養生にかかる費用は30〜40坪の一般的な戸建て住宅で約15万円前後となります。この金額には、安全性を確保するための足場材や人件費、養生資材などが含まれています。相場よりも大幅に安い見積もりを提示する業者には注意が必要です。適正価格であっても、安全かつ丁寧に対応してくれる業者を選ぶことが、最終的な仕上がりに直結します。
工程2 高圧洗浄から乾燥 1〜3日、工程3 下地処理とコーキング補修 1〜2日
足場と養生が完了した後は、高圧洗浄によって外壁や屋根に付着した汚れを徹底的に除去する工程に移ります。この洗浄工程は、外壁塗装の密着性や耐久性を左右する非常に重要な作業です。外壁には、雨風や排気ガス、カビや藻などが付着しており、これらを落とさずに塗装を行うと、塗膜の剥がれや早期劣化の原因となってしまいます。
高圧洗浄には業務用の高圧洗浄機が使用され、水圧は120〜150気圧程度にも達します。作業時間は建物の規模や外壁の素材によって異なりますが、通常は1日、汚れがひどい場合や面積が広い場合には最大で3日程度かかることもあります。
洗浄後はしっかりと乾燥させる必要があります。目に見えない水分が残っていると、塗料の密着性が悪くなり、数年後には塗膜の浮きや剥がれが発生する可能性があります。気温や湿度により乾燥時間は異なりますが、最低でも24時間の乾燥期間が設けられるのが一般的です。特に冬や梅雨の時期は乾燥が遅れるため、工期にも影響が出やすくなります。
十分に乾燥した後、続いて下地処理とコーキング補修に入ります。この工程では、外壁のひび割れや欠損部の補修、そして古くなったコーキング材の打ち替え作業が行われます。外壁の継ぎ目や窓周りのコーキングは紫外線や雨風によって徐々に硬化・劣化し、ひび割れや剥がれが生じやすくなります。そのまま塗装をしても、内部に水分が浸入しやすくなるため、事前にしっかりと補修を行うことが求められます。
特にサイディング外壁を採用している住宅では、目地のコーキング処理が耐久性を大きく左右します。古いコーキング材を完全に撤去し、新たに打ち直す「打ち替え工法」が基本とされており、耐久性の高い変成シリコン系やウレタン系の素材が多く用いられています。
工程4 塗装 下塗りから上塗りまで 各1日ずつ、工程5 完了検査と足場解体 1〜2日
塗装作業は、外壁塗装において最も目に見えて変化を感じられる工程です。主に下塗り、中塗り、上塗りの3回塗りが標準とされており、それぞれの工程でしっかりと乾燥時間を確保しながら丁寧に作業が行われます。
まず、下塗りでは下地の状態を整えるための塗料が使用されます。この層は外壁材と中塗り塗料の密着性を高め、塗膜の剥離を防止する役割を果たします。サイディング壁やモルタル壁など、外壁の素材によって適した下塗り材を選定することが重要です。
次に中塗りは、塗料の性能を活かすために行う工程で、厚みを持たせて耐久性を向上させます。そして最終工程である上塗りでは、美観を高めると同時に、紫外線や雨風などの外的要因から建物を守る機能性が加わります。光沢や色合いの均一性は、上塗りの仕上げによって決まるため、職人の技術力が最も問われる部分でもあります。
各工程は天候にも左右されやすく、特に雨天や湿度の高い日は作業が中断されることもあります。そのため、1工程あたり1日と見積もられていても、天候によってスケジュールは柔軟に調整される必要があります。塗料の乾燥には、気温が5℃以上、湿度が85%以下という条件が推奨されており、これを下回る場合は施工の延期が望まれます。
全ての塗装工程が完了した後は、完了検査が行われます。ここでは塗りムラや塗り残しがないか、塗膜の厚さが基準を満たしているかなど、複数のチェック項目に基づいて最終確認が実施されます。また、足場の解体前には施主立ち会いによる確認が行われるケースも多く、万が一の不具合にも迅速に対応できる体制が整えられています。
完了検査の後、足場の解体と周辺の清掃が行われ、すべての工程が終了します。足場解体には1日から2日を要するのが一般的です。この作業でも金属音や振動が発生するため、近隣住民への事前告知や配慮が欠かせません。